真田昌幸

さなだ まさゆき

甲斐武田家臣。

真田家は信濃の豪族。

父の真田幸綱が武田家に臣従し、三男の昌幸は人質として武田信玄のもとへ送られた。

昌幸は近習として仕え、信玄の軍法を間近で学んだともいえる。

川中島の戦いが初陣で、馬場信春勢に属し足軽頭であったとも伝わる。

当時は武藤家を継ぎ武藤を名乗っており、三増峠の戦いや三方ヶ原の戦いにも参陣している。

信玄が病没すると、跡を継いだ武田勝頼に仕えた。

長篠の戦いでは兄2人が討ち死にしてしまうが、昌幸は勝頼本陣の旗本衆だったので生還する。

よって昌幸が真田家に戻って家督を継ぐことになった。

織田家の甲州征伐では、昌幸は武田勝頼に上野岩櫃城へ逃亡するよう促し、勝頼を迎える為に先に向かった。

しかし勝頼は、小山田信茂の守る甲斐岩殿山城へ向かってしまう。

一説では、勝頼は次々と家臣に裏切られていたので、昌幸にも警戒していたとされる。

だが結局は小山田信茂にも裏切られ、天目山で自害した。

のちに昌幸は、このとき勝頼のもとを離れたことを後悔していたという。

武田家の滅亡後、真田家も他の武田旧臣と同様に織田家に臣従した。

しかしわずか3ヶ月後に、織田信長が本能寺で横死する。

この混乱で甲斐・信濃・上野の武田旧領から織田家臣たちはみな逃亡したので、徳川・北条・上杉家らが争奪戦を始めた。

昌幸もこの混乱に乗じ、上野沼田城を奪取している。

混乱の渦中において真田家は生き残りを計り、まず上杉家に臣従する。

しかし北条家が信濃に進軍してくると、早々にこれに降る。

だが甲斐を巡って北条家と徳川家が争いを始めると、今度は徳川家と手を結んだ。

このとき、沼田城に攻め込んで来た北条勢を撃退している。

また徳川家の援助で、信濃に上田城を築く。

徳川家と北条家は和睦することになり、その条件のひとつとして上野沼田城を北条家に割譲することが決められた。

自ら獲得した領地を明け渡すことに納得がいかない昌幸は、これを拒否する。

そのころは徳川家康も、畿内を掌握した羽柴秀吉と小牧・長久手の戦いで争っていた。

だがその戦いも和睦となって終結すると、業を煮やした家康はついに信濃上田城へ侵攻を開始する。

昌幸は徳川家との手切れを決意し、再び上杉家に臣従してこれに対抗する。

上田城の戦いにて、真田勢はわずかな手勢ながら徳川勢を翻弄しこれを撃退した。

この戦いは結局、関白となった秀吉の仲介によって和睦する。

上野の一部を北条家へ割譲し、代替地を得て真田家は豊臣政権の独立した大名と認められた。

真田の名を全国に知らしめた昌幸は、次々と従属先を変え謀略に長けた「表裏比興の者」と称される。

北条家は秀吉が下した裁定を破り、真田領となった上野の名胡桃城を突如として攻撃する。

これが小田原征伐の引き金となった。

昌幸も前田利家が率いる北陸・越後軍に従軍している。

秀吉の没後、昌幸は家康の会津征伐に従軍していたが、京では石田三成が挙兵する。

下野の犬伏でその報を聞いた昌幸は、長男の信幸と次男の幸村で協議した。

結果、昌幸と幸村は西軍に与し、徳川家の重臣・本多忠勝の娘婿である信幸は東軍に付くことになる。

親子が東西に分かれたのは、どちらが勝っても真田家が存続する策であったともされる。

こうして西軍に付いた昌幸の上田城には、家康の後継者・徳川秀忠が率いる徳川本陣の軍勢が迫った。

昌幸は降伏する素振りを見せながら遅滞させ、籠城して徹底抗戦を行うなどまたしても徳川勢を翻弄する。

結果、徳川勢は上田城の攻略を諦め素通りするが、関ヶ原の本戦には遅参してしまう。

関ヶ原の戦いは東軍の勝利となり、西軍に付いた昌幸・幸村の親子は高野山、次いで紀伊の九度山へと配流となった。

昌幸はやがてその地で没する。

しかし大名としての真田家は、東軍に与した長男の信幸が存続している。

2度に渡って徳川家を翻弄した真田昌幸は、家康にとって最も厄介な者であった。

大坂の陣が勃発する頃、

「大坂城に真田が入った」との報せ聞いた家康は

「それは親の方か?、子の方か?」と訊ねた。

それほどに昌幸を家康は恐れていたという。

ちなみに子の幸村と知って家康は安心するが、のちに大坂の陣にてまたしても真田に苦しめられることになる。